
会長あいさつ.
ごあいさつ
昆虫学の発展には,これまで数多くのアマチュア研究者が大きく貢献してきました。ウォルター・ロスチャイルド,ジャン=バティスト・ボワデュヴァル,ハンス・フルストルファー,そして塚田悦造など,研究機関に所属しない立場から活動した研究者が,昆虫学の進展に重要な役割を果たしてきたことは広く知られています。
しかし近年,採集許可制度の厳格化により,国内外を問わず,正式な許可なしに自由な採集調査を行うことが困難になりつつあります。こうした状況を踏まえ,私たちは昆虫学のさらなる発展に寄与するとともに,昆虫を愛する者としての探究の喜びを大切にしたいという思いから,2013年にアジア昆虫調査研究会Asian Insects Research Society(AIRS)を設立しました。
英語名称については,通常であれば Asian Entomological Research Society の方が自然かもしれません。しかし,あえて Insects を用いることで略称をAERSではなくAIRSとしました。AIRSという名称には、学会組織としての形式や権威にとらわれることなく、「空気(air)」のように自由で自然体の研究活動を志向するという理念が込められています。この理念のもと,年会費は設けず,プロ・アマを問わず分類学や生態学に関する研究成果を自由に発表できる場を提供することを目指しています。
また,新たな知見を発表する機会が減少している現状を踏まえ,海外の研究機関との連携も積極的に推進してきました。最初の覚書は,2014年4月にベトナム国立自然史博物館と締結され,これを契機に国際共同研究を開始しました。ベトナムのカインホア省ホンバ自然保護区やラムドン省ビドゥップ・ヌイバ国立公園での調査は現在も継続しておこなっています。またベトナム各地での調査を重ね,多くの研究成果を発表してきました。さらに2025年にはミャンマー昆虫学研究会と共同研究協定を締結し,ミャンマーで発見されたタテハチョウの新種を発表しました。
AIRS設立13年目となる本年,研究発表の場をさらに充実させるため,論文誌『AIRS昆虫学研究誌AIRS Journal of Entomology』を創刊します。本誌へのご投稿は,日本を含むアジア地域における昆虫の分類,形態,生態,研究史などに関するものであれば,プロ・アマを問わず広く受け付けてまいります。新たな知見が一つでも含まれていれば,短報のご投稿も歓迎いたします。
AIRSをご存知の方には,今回新たに発刊する論文誌は対象がチョウに限られると思われるかもしれません。確かにAIRSのコアメンバーはチョウの分類,生態,研究史に関して多くの実績を残してきた専門家ばかりです。しかし今回の『AIRS昆虫学研究誌AIRS Journal of Entomology』はチョウのみでなく,広く昆虫全般を対象にしてまいります。幸いにチョウ以外の蛾,甲虫,ハチ,カメムシといった分野の専門家の方々に編集顧問委員としてご参画いただくことができました。
本誌を通じて、得られた知見を国内外の研究者に積極的に発信し,情報共有を促進してまいります。本会の活動にご理解を賜り,昆虫学の未来をともに切り拓く仲間として,論文のご投稿や論文誌のご購読を通じてご参加・ご支援いただければ幸いです。
2026年6月

アジア昆虫調査研究会
会長
横地 隆
